【小説】脇坂副署長の長い一日/真保裕一
真保裕一著の『脇坂副署長の長い一日』を読んだ。
アイドルが一日署長をするイベントの時に、9年前の事件が絡んできたりと、脇坂副署長が一日中駆け回り、9年前の事件の真相に辿り着くという話。
色々な出来事が出てきて、状況がカオス的になるが、最後には1つにまとまるという手法を用いた警察小説。あまりミスリードがないから、読みやすい内容となっていると思う。言い方を変えれば、あまり捻りがない分、退屈する可能性もある。
しかし、いくら犯罪者の雇用をし、社会に貢献している社長といっても、9年前に死刑もありうる殺人放火事件を隠し続けていたのに、9年後に自白したから、情状酌量を望むとかありえる?死んだ人が浮かばれないだろう。なぜ、こういうことを平気で書くのだろうか?自白したといっても、9年後。その間、平気で社長として、悠々自適に暮らしているのはおかしいだろう。理解ができない。
読みやすい小説ではあるが、何か満足ができない作品。小説ないぐらい正義が成り立つというのが個人的には好み。関係ないかもしれないけれど、日本の中途半端な考え方が影響しているのかもしれない。いじめを例として、いじめがあったら、いじめられる方にも問題があるという答えもありえると考えられている。いじめられる側を徹底的に観察して、何か失言があったら、いじめられる側も悪いみたいな。本質はそこ?いじめという行為が良いか悪いかが議論されないといけないのに、加害者は悪くないみたいになってしまっている。このような意味不明な考え方が、殺人を犯した犯人を人情話に変えて、本質をあいまいにする傾向になっている。この傾向がこの本に影響を及ぼしているかもしれない。何度も言うが、小説ぐらいは、正義がなされるということを望みたい。